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新たな技術を福祉にいかす体験ワークショップ 2017/9/6

日時: 2017年9月6日(水)13:00~17:00

会場: IAMASイノベーション工房[f.Labo](岐阜県大垣市加賀野4丁目1-7)

 

—-目次 —————————–

イントロダクション

第1部:新しい技術・道具を知る

   特別支援学校 × レーザーカッター

   3Dプリンターをもっと気軽に

   MESH(メッシュ)という道具を知ってみる

第2部:福祉にいかす

第3部:振り返り


 

イントロダクション

人口減少など暗い話も多い中で、テクノロジーに関しては明るいニュースの方が多くあります。

今までだったら、高いお金を払わなければならないとか、許可をもらわなければならなかったテクノロジーが、ほぼ無料に近い形で自主的に利用できるようになっています。

自分たちの力でいろんなものをつくりあげていく「Maker(メイカ―)」や技術を善意的に利用する「Hacker(ハッカー)」が増えてきています。

IAMASの卒業生の島影さんもその一人。「OTON GLASS」という 文字を読みにくい人(ディスレクシア、難読症)を、音声でサポートしてくれる眼鏡を開発しています。これも大きな先行投資がありきではなく、Raspberry Pi(ラズベリーパイ)など身の回りにある電子部品を組み合わせたり、提供されているAPI(Application Programing Interface)を活用することで、勝手に自主的につくってしまってから、それから他の人たちを巻き込むことができるようになっています。

前までは「こういうものを欲しいんですけど」とメーカーに頼んでいたものが、自分たちで作ることができるようになっています。

とはいっても、やってみないとなかなか実感できない部分があるので、今日は短い時間のなかで凝縮してやろうと思っています。

 

第1部:「新しい技術・道具を知る」

特別支援学校の先生たちが授業で使う道具をデジタル機材でつくる「教材自作部」の事例と、明治大学の秋山耀さんの研究事例(手書きの図面で簡単に立体プリントできる3Dプリンタなど)を通じて、デジタルファブリケーションが具体的にどんなことができるかを紹介いただきました。その後、IAMASの小林茂さんに「MESH(メッシュ)」という道具を使って、センサーの使い方、さらにはインターネットとつながることでできることを体験するために「IFTTT(イフト)」というアプリを使ったワークショップを行いました。

 

特別支援学校 × レーザーカッター

山田晃嗣さん(情報科学芸術大学院大学 [IAMAS] 准教授)

 

教材自作部は、IAMAS の研究補助員の篠田幸雄さんが「福祉の技術プロジェクト」に参加し、特別支援学校の現場で自作されている教材・教具に関心を持ったのを契機にスタートしました。今回は、福祉の技術プロジェクトを中心に進めている山田晃嗣さんから教材自作部について事例報告がありました。

特別支援学校は、障害のある人の教育と自立を目的とした学校です。その特別支援学校では、児童生徒に合わせてさまざまな教材・教具が積極的に自作されています。しかしながら、その多くは主に手工具でつくられているため、作りたいものを十分に実現できていない教材や、アイデアのまま保留している教具がたくさんあります。

先生たちは授業以外にもたくさん業務があり、授業の準備に割ける時間は少なく、自宅でやる人やポケットマネーでつくる人もいます。教材の材料も自分の手でできる範囲なので、紙で作ったり布でつくったりすることがほとんどです。

そこで、デジタルファブリケーション技術を使い、もっと個人に適した教材・教具を作る支援活動を「教材自作部」と名付けて始めました。

教材自作部のように勉強や自作をする機会を提供する活動の先行事例として、「魔法のプロジェクト」、「マジカルトイボックス」、舞鶴高専の「高専と特別支援学校の地域連携による技術教育」などがあります。

 

“知る” から “自分たちで改善する” まで

一部の学校にはレーザーカッターが導入されていますが、まだまだ教育現場にはない状態です。全国の先生たちが、自分たちで作った教材のデータで共有して有効に活用することで、先生と生徒の時間ができるのではないかと考えられます。そのためにうまく導入するような方法や、先生たちのノウハウを引き出せるような取り組みを目指し、「教材自作部」は大きく4つの流れで行なっています。

(1)デジタルファブリケーション技術によってどういう教材ができるかを知る

(2)こういう教材ができそうだねとアイデアワークショップをする

(3) 実際に自作する 

(4) 自分たちで改善していく

 

まずは情報を提供すること、それから興味を持った人が実際に実現するための支援を行なっています。

(1) デジタルファブリケーション技術によってどういう教材ができるかを知る

レーザーカッターや3Dプリンターを使ってこういうものをつくりましたということを紹介。たとえば「分数を教えるための教材」を紹介したところ、「目の見えにくい生徒だと分かりにくいからここにシールみたいなものを貼ったほうが分かりやすいよね」と改善点を指摘できるほどに具体的なイメージができるようになります。

 

(2) こういう教材ができそうだねとアイデアワークショップをする

つくるまではいかないけれども、レーザーカッターや3Dプリンターでできることがある程度知ったところで、「こんな教材がつくれるのではないか」というアイデアワークショップを行ないました。このワークショップの前後で「つくってみたいもの」というアンケートをとってみたところ、やはりワークショップ後のほうが倍以上の数でかつ具体的なアイデアになっていた。

「レーザーカッターで教材教具は何が変わるか」という質問に対して、見て触ってわかりやすいものになる、紙からアクリルなど素材が変わり丈夫で長持ちになるといった答えが返ってきた。課題ももちろんあり、装置が近くにないことが挙げられました。

 

(3) 実際に自作する 

最初はArduino(アルドゥイーノ) など電子工作を考えていたが「え~~」と敷居が高く感じられたので、まずはレーザーカッターから始め、もう少し進めたい人は3Dプリンターを使用するように進めました。

レーザーカッターで工作するためのデータをつくるときに、

 ・Illustratorを使う

 ・IAMASでやる

ことを考えていましたが、

 ▲ Illustrator がなくなると作業ができなくなり止まってしまう

 ▲ 先生たちの自主勉強の時間帯が 16:00~17:00 と短い時間

という条件もあることから、

 ・Illustratorを使う → Wordを使う

 ・IAMASでやる → 学校でやる

という風に工夫しました。Wordを使って、レーザーカッターでカットしたい部分は赤線で描き、PDFではき出したものをメールでIAMASに送ってもらうことにしたものを、IAMAS側で加工をする。

 

(4) 自分たちで改善していく

生徒に実際に使ってみて、この点は悪かったなと自分たちで改善し具体的に教材を自作していく先生たちもいます。

①盲学校: 16部音符などリズムを触って音楽を学ぶ音符カード  

②聾学校: 分数用教材から触発されて、短冊型のものをつくる(2/6 = 1/3を理解する) 

③大垣特別支援学校: 就労を見据えた作業学習があり、そこで使用する型紙をアクリルで制作する。透明で下がみやすい

月1個のペースで教材を作成・改善して、「もう少しこうしたい」と音符のバージョンも新しくなっていたりします。

今後は、データ共有も見据える必要があります。国立特別支援教育総合研究所にポータルサイトがあり、そこに教材データ「aiファイル」を共有することも考えられます。

 

【参考】

*教材自作部: http://sunshine150.wixsite.com/kzjs

 

 

3Dプリンターをもっと気軽に

秋山耀さん(明治大学大学院理工学研究科 宮下研究室)

 

明治大学大学院の研究室では、人とコンピューターのつながりをつくる「Human Computer Interaction(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)」の分野で、3Dプリンター、琴演奏の支援、VRなどを研究しています。

自身では「3Dプリンターを背負って花見に行って、花見会場に向かっている間にフォークを3Dプリントで出して、それを使って芋ようかんを食べる」といったこともやっています。https://gutugutu3030.github.io/

3Dプリンターで何かをつくるために色々な方法があり、主に使用しているのは「熱溶解積層法式(ねつようかいかいそうほうしき)」といって、ソフトクリームのように上から溶かしたプラスチックを重ねてつくる方法でつくっています。

「自宅に3Dプリンタがある人、手を挙げてください」といって持っている人はほとんどいないので、正直3Dプリンタは普及していない状態です。これは、まだまだ使い勝手が悪いことが原因の1つにあります。3Dデータをつくるためソフトがあって、それにはボタンがいっぱいで難しく断念してします。

そこで、極力シンプルな操作でできて、身近なものにするための取り組みをしていて、ここでは2つ紹介をします。

 

コピー機のような3Dプリンタ

1つは、コピー機のように簡単に造形物を出力できる3Dプリンターシステム「Fitter」です。多くの人がすでに利用しているコピー機と同じように操作ができます。たとえば、自分の「手」をおいてコピーしたあと、指にちょうど合うように指輪の線を手描きするだけで、指輪ができます。

入れ物やアクセサリーなど「ピタッとはまってほしいもの」をつくるときに非常に役立ちます。今までであれば、

 ・3Dスキャナを使って形を読み取る or 定規を使って地道に測る

 ・パソコンでデータを設計する

 ・出力する

と3つの動作と場所が必要でしたが、これらを1つにまとめることができます。指輪の他にも、眼鏡ケース、ドローンを保管できるケース、iPhone 5用のデザインをiPhone 6にカスタマイズするといったことが簡単にできるようになります。

 

紙に描くだけ立体物をつくってくれる

3Dプリンターを身近にするもう1つの方法は「紙を使って設計する」です。マジックと紙を準備して、コップの横からみた図(側面図)と上から見た図(上面図)を描き、これを機械に読み込ませるとジャーーンとコップが出てきます(出力時間:1時間17分)

技術的な話になりますが、ソフトクリームがソフトクリームとしての形状を保てているのは、下にそれを支えるもの(コーン)があるからです。その形状を支えるためのものが「サポート材」と呼ばれるものです。

コップの場合、持ち手の部分と床の間には何もありませんが、3Dプリンターで積み重ねていくときには、間にサポート材がないと造形できません。このサポート材はあとで取り除きやすく設定されています。

 

 

「いや、正面図と上面図を描くのすら難しいんですけど。。。」といった人でも、どちらか1面だけを描いたら、厚みは機械的に設定することもできます。向きが逆でも大丈夫

もちろん改善の余地はありまして、方眼に沿って書かなければいけないとか、コップの空洞の部分は塗りつぶさないといけないといった制約はまだありますが、動作としては「紙に書いて、ボタン押すだけ」と簡易にできるようにしています。

実際に、小学生から高齢者まで、PCの使えない人でも3Dプリンタが使える世界ができるかどうか

小学3年生(9歳)の女の子はウサギの頭を、小学5年生の男の子は筆立てを、75歳の女性は長押(なげし:日本建築で、柱から柱へ渡して壁に取り付ける横木)に取りつけやすいフックを、81歳の男性はブックエンドを、そして主婦の人はペットボトルをたてて乾かす道具をつくることができていました。

「コピーをとって、つくる」

「紙に書くだけで、つくる」

できるだけ3Dプリンターを使いやすくしよう!といった動きは進んでいるので、3Dプリンターを使いたい人が不自由なく使える未来はすぐそこにあると思っています。 

 

【参考】

*コピー機のように簡単に造形物を出力できる3Dプリンターシステム「Fitter」

*手書きの図面で簡単に3Dプリントできる3Dプリンタ

 

MESH(メッシュ)という道具を知ってみる

小林茂さん(情報科学芸術大学院大学 [IAMAS] 教授)

 

「教材自作部」「3Dプリンタの研究」の事例を聴いたと思いますが、もうちょっと頑張ってインプットを詰め込んでいきましょう。

今日使う道具はそれぞれ4セット準備して、3~4人に1セットを使用します。まずは、MESHというツールを試しながら進めるので、使ったことがない人に優先的に使ってもらいます。

 

****** 事前準備 *****************

1グループ分の準備物は下記のとおりです

MESHタグ(充電も忘れずに)7種類

●タブレット(今回はiPad、充電も忘れずに)

 - MESHアプリのインストール

 - IFTTTアプリのインストール

 - Googleアカウントの取得(~~@gmail.comなど)

*********************************

MESH(メッシュ)はSONYのスタートアッププロジェクトの中で開発された道具で、難しいプログラミング知識も必要なく、身近なものとセンサーを無線でつなぎ、IoT体験ができます。

 

MESHのイメージ

まずは、MESHがどのようなものかイメージ共有します。

 

 

MESHの準備

次に、どういう風に使っていくのかを、動画を見ながら一緒にセッティングしていきましょう。

 

・MESHタグの電源を入れると、2秒くらい押すと白い光がボワンとつきます

・タブレット(今回は、iPad)を起動して、MESHアプリのアイコンをタッチします。

 

次に、「ペアリング」といって MESHタグとタブレットを無線(Bluetooth)でつなぐ作業をおこないます。

7種類のタグがつながったら、タブレットとつながったら完了です。どうしてもつながらない場合はMESHタグの電源を切ってもう一度つけててください。

 

MESHを試してみる

まずは、「ボタンを押したら」 → 「LEDが光る」といった動作を試してみる。

 

次に、「コップで飲もうとしたら」→「飲まないでと叫ぶ」コップをつくってみる。

 

「●●したら、△△する」といったことを想像することは慣れていないと難しいので、それをサポートするために「MESHデザインパターンカード」というものがあります。

たとえば、「ボタン押したら、スプレッドシート(インタネット上にあるExcelのようなもの)に記録する」といったことを考えていくためのカードです。

 

 

これまで紹介したのは、まだ目の前の世界で起きていることつないでいるだけです。「ボタンを押したらスプレッドシートに記録する」ためには、ここからさらにネットワークにつながる必要があります。

そこで活用できるのが「IFTTT(イフト)」というアプリです。これはネットワーク上にあるサービスとサービスを結びつけるものです。たとえば、FacebookやGmail、LINEやInstagramなどネットワークを介して利用しているサービスはたくさんありますが、それぞれ独立していることがほとんどです。

それを例えば、「好きなユーザーがTwitterでつぶやいたら、Lineに通知する」といったようにサービスを組み合わせることができるようになります。

IFTTTは、その名の通り「IF This Then That」=「●●したら、△△する」というサービスとサービスの結びつけをを特に難しいプログラミングを必要とすることなくできるアプリです。

 

MESHとIFTTTの連携の初期設定

IFTTTのアプリ設定  : 「This」のところで「MESH」を選択し、「That」のところで「Google Drive」を選択することで、「ボタンを押したら、スプレッドシートに記録する」という動作が実現できます。

 

 

MESHを体験してみてアイデアを考えてみる

15分間で「こんなことができそう」と各チームで考えてみましょう。可能であればMESHでつくってみてください。

 

・・・ 15分後 ・・・

 

誰が話すか、どのアイデアを話すかをチームで作戦会議して、各チーム1分ずつ発表します。

 

チーム①

人が動かなくなったり、いなくなった(感知しなくなった)通知があったり写真を撮影したりする。 

チーム②

人がある場所を通ったら、電球が光って、メール・写真で記録。誰が出ていこうとしているかを確認しつつ、なおかつ効果音で「行ったらあかん」と注意をうながす。

できれば現実の中でサポートになるような内容で考えた 昼間とか夜とか職員が目が配れない部分で何かサポートの動きができればと考えた。

他にも、振動で検知したら何かいろいろ話してくれるものも考えた。喋れない人にとってはいいのかなと思う。

 

チーム③

MESHの動作を確かめることをやった。温度・湿度センサーで、温かくなると知らせてくれる。タブレットのカメラ機能を使って、ボタンを押すと画像保存をやってみた。

チーム④

お母さんが外で働いていて、一人留守番の子どもを想定。帰ってきたら人感センサーでLINEで知らせてくれる。言葉がないと動けないので「おやつ食べていいよ」とか「プールの準備をしといて」と一声かけてくれる。

他にも作業的なことで、重さをはかったり、枚数をはかったりする作業を、できない人もできるように、職員がチェックをしなくてもできるようになるといったアイデアが出た。

 

 

第2部:福祉にいかす

1部で知った技術・道具を知識として入れつつ、福祉の現場に活用するためのワークを行ないました。まず現場の「誰の」「どんな状況」をより良くしたいのかを全員で共有しながら、課題のシチュエーションを整理しました。そこから3チームにわかれ、チームごとに課題を1つ選び、その課題に対するアイデアスケッチをしました。最後に全チームのアイデアを共有し、投票形式でそれぞれのアイデアを評価しました。

 

(1) 誰のどんな状況を想定するかを決める

1チーム5~6人になるように、4チームから3チームに変更しました。

先ほど知った道具と自分たちの現場を結びつけるワークとして、シチュエーションを固定してチームでアイデアを考えていきます。

シチュエーションと言っても「鈴木さん」と固有名詞で言われてもわからないので、他の人でもイメージできるように「だれ」の「いつ」のシチュエーションなのかを全員で出しあいます。

【だれ】
スキルを身につけたい人
車イスの利用者
発語がはっきりしない人
四肢麻痺で顔でしか操作できない人
判断能力が落ちた人
家族
スタッフ

【いつ】
トイレに行きたいとき
ステージで発表するとき
PC以外の作業をしたい時
独りで家にいるとき
離れているとき
人数が少ないとき
視覚化して伝えたい時

 

ここで出てきた「だれ」「いつ」の中から、各チーム1つずつシチュエーションを決定します。

 

Aチーム

 (だれ)判断能力が落ちた人

 (いつ)独りで家にいるとき

 

Bチーム

 (だれ)四肢麻痺で顔でしか操作できない人

 (いつ)PC以外の作業をしたい時

 

Cチーム

 (だれ)発語がはっきりしない人

 (いつ)ステージで発表するとき

 

これらのシチュエーションを基に、アイデアスケッチを行ないます。


(2) スケッチの仕方を説明

 

***** 準備物 **********

●アイデアスケッチ用紙(タイトル/だれ/いつ/どこ/ポイントをA4サイズ1枚)

●ペン4種類(細い黒色、太い黒色、オレンジ色、グレー色)

***********************

例えば「トイレが終わったら、伝えたい人にメッセージが届く」といったアイデアを描くとします。そればボタンのような形状だとしたら黒いペンで大きく描いて、「どこがポイントになるか」をオレンジ色で塗ります。グレー色のペンは影をつけるだけの役割ですが、それっぽく見えるようになります。

「名前(アイデアのタイトル)、だれ、いつ、どこ、を説明します。人・車いすを描いたり、システム図など複雑なものを描こうとすると難しいのでモノだけを描いてくれたらOKです。

 


(3) スケッチ

 

20分間で、1人1人がアイデアスケッチを描きます(最低でも2つは描いてほしい)。

(ペンが裏移りしないように注意!)

 


(4) チーム内で共有

 

「だれ」「いつ」はすでに共有しているので「どこ」「どんなものなのか」をチーム内で紹介すします。

○分からなかったら、ぜひ質問してください。

○聴いてるときに「それだったら、これもありかも」と人のアイデアを聴いてるなかで思い浮かんだバリエーションは追加で描いてください。

✖「それはいいよね/難しいよね」と評価をしはじめると話が閉じてしまうので、評価はしないようにする。

 


(5) 貼り出す・投票

今回、全員で40個くらいのアイデアが出ました。ここから、1人2票ずつで投票をしていきます。


(6) ディスカッション

全部を見ていきたいが、票の多かったものについてディスカッションしていきます。「なぜ、それに投票したのか?」を共有していきます。

 

■「栄養管理冷蔵庫」 5人が投票

判断能力が落ちた人が独りで家にいるときで、キッチンとか食卓において、冷蔵庫の中からどの食材が足りなくなったかを感知してバランスのとれた栄養摂取ができているかどうかを確認する。

(なぜ、投票したのか、なんでいいと思ったのか)

・普通に自分が欲しかった

・冷蔵庫以外にも、モノをどこに置いたのかと拡張性がありそう

・自分では覚えていられなかったり、うまく言葉で伝えられない人も、本当に食べていなかったり/得られていない栄養のアドバイスを受けられたりする

・使っていた食材の記録が残るので、生活のなかで必要な情報として活用できそう

 

■「パペットくん」 4人が投票

判断能力が落ちた人が独りで家にいるときに、分からないことがあったら聴くと教えてくれる。例えば、「○○はどこ?▽▽にあるよ」「○○はどうすればいい?▽▽しておいてね」といった感じ。 

(なぜ、投票したのか、なんでいいと思ったのか)

・形が可愛い。教えてもらうにしても無機物なものに語りかけるのは寂しいので、可愛い形だと1人でも話しかけやすい

・ATMの使い方がわからなくなるとか、誰かに聴くと「こんなこと知らないの?」と言われそうで聴きにくいことも機械に頼って自己完結できるので、自分自身の意思を尊重できる装置かなと思った。

・「誰かに聴かないといけない、という判断すら難しい」場合もある。「困ったなぁ」というつぶやきを拾って応えてくれたり、「誰かに聴いてみる?」と提案して誰かに発信してつないでくれる機能もあるとよいかも。

・身近な家族やスタッフの声を聴いて安心できそう。自分で吹き込んで自分で生活を整えることもできそう。

 

■「日々のチクタク」 4人が投票

判断能力が落ちた人が、独りで家にいるとき、ある程度のタイムラインの中で自分が行動できたかチェックできる。「まだご飯食べてないよ」「お風呂入ってないよ」とか。

(なぜ、投票したのか、なんでいいと思ったのか)

・私がほしいな 一人暮らしもそうだけど、施設の中で1人の職員がたくさんの人を見なければならないときに、ついつい忘れてしまってることがあると教えてくれたりする

・時間の感覚がなくなりがちのときに、「はっ」と気づくときがあるのはいい

・時計はみんな見る習慣があるので、新しい機械をいれるのではなくて、すでに日常的にあるもの

・パッと見で、理解できてわかりやすかった。生活の中でリズムは大事

 

■「音声ネクタイ」 4人が投票

発語がはっきりしない人がステージで発表するとき、のどの動きを読み取って、話すと同時に音声が出る。感情で色が変わる。ステージなのでネクタイっぽく。

(なぜ、投票したのか、なんでいいと思ったのか)

・ネクタイの形で非常につけやすい。何気なくつけてられる。感情で色が変わるのが素敵。言葉以外にもその人の気持ちが表現できる。

・ネクタイが自然な形でよいなと思った。定型の言葉が出るっていうよりも、自分の言葉をそのまま分かりやすく発してくれるというのがいい。舞台上なのである程度セリフは決まっているけれども、アドリブもある。

・形がかわいい。「舞台に出るぞ」と分かりやすい形。

・発語がしにくい方々の医療分野的の余地がありそう。

 

(7) 最後に

同じルール(描き方のフォーマット)でお願いしたのは、 全部のアイデアを一面に貼りつけると「1人の人が描いたんじゃないか」と思えてくるためです。「これは私が書いた」「これは上司が書いた」と判断に偏りが生じてしまうのを防ぐことにもなります。ポストイットに描くこともできますが、小さく大量になるので追いきれなくなってしまうのでA4サイズ1枚におさめてもらっています。

「票が少ないから価値がない」というわけではありません。20分という時間で40個のアイデアが出るのであれば、2回やると80個、3回やると120個のアイデアが出てきます。誰かがほしいと思うものは他の人もほしいアイデアなので、それらの活かしようを考えるキッカケをつくり、深めていくことが大事になってきます。

 

 

 

第3部:振り返り

3Dプリンターやレーザーカッターによる「Fab」の事例とMESHを体験をしたうえで、「現場で一番やりたいこと」「エンジニアとやってみたいこと」について語りあい、新たな技術に対する可能性や期待について考えました。

 

自分の現場でいま一番してみたいことは?

・(管理職の立場として)スタッフがこの技術を使って、楽になってほしい。記録系とか事務的な時間を、コミュニケーションなどより良い時間に使いたい。

・私が想定していたのは、成年後見の対象となる人。判断能力が落ちて、認知症で、介護度が1で、身体は元気だけれども、もともと発達障害があって、大きな家に一人で住んでいる。今までお兄さんと住んでいたけれど、独りになった。デイサービスで週2回外へ出るが、それ以外は家で暮らしている。ご飯炊いてお茶を沸かすことはできるけれども、それ以外は近くのコンビニで缶詰を買って暮らしている。デイサービスじゃない(見守りがない)時間で、どういう風に生活しているのかを見守れたらいいなと思っている。動きがGPSで分かるとか、いまは体調が悪いとかわかったりすればいい。現実的には、福祉サービスが行き届かないことのほうが多いので、施設とか組織だけじゃなく、個別に利用できればいいなと思う。

・職員も利用者もみんなが自由になれるようにしたい。やりたいようにやってるんだけど、ちゃんと仕事になってたり、安全性が保てていたり。そのときに人間の人力的には及ばないところを助けてくれる。肉体的に精神的に自由になれるような空間をつくっていきたい。

・「テクノロジー」とは縁遠いところに、新しいテクノロジーをいれていきたい。支援を必要としている人は千差万別なので コストを下げて個別のものができないか。職員が楽になる・楽しくなる、そのために現場に技術をどう落とし込んでいくかを考えている。

・(ライターとして)つくられている商品が広く知られてほしい。福祉に興味がある人だけでなく、いろんな方が関われるようになってほしい。

・必死にはたらいている人が多いなかで、力がはいらなくてもいい、力がぬけるようなことになっていってほしい。

・福祉の3K(きつい、給料が安い、汚い)と言われているなかで、FabやIoTが活かせる福祉がでてきたら、福祉の仕事って格好いいとか誇りを持ってできることができるかもしれない。いまは、「サービス提供する人/支援を受ける人」と分けてしまっているからこそ、ちょっとしたことで関係がこじれたりしてしまうけれども、新しいことに同じ立場でやることで「一緒にやったろう」という風になったらいいなと思う。

・「動けない人の仕事」という点で話していて、実際には仕事っていうよりは「彼はもっとみんなと関わりたいのかも」「関わる機会が奪われているんだな」と、動けないこと・自由がないことで機会がうばわれていることに気づいた。「私が喋れば水がでてくるようになれば楽なのに」と言っていたことが「そうだよね~(まぁ、それはできないけど)」と流していたことが、いやできるかもしれない時代がきているんだなと感じた。「こんなのがあったらいいのに」「こういうのに困ってる」という言葉に対して、「できるかも」という視点で関わっていけそう。

・施設のスタッフが管理する、報告する、準備する、お膳立するのではなく、自分で次の準備ができたり、自分で自分を管理できるようなサポートができたらいいなと思いました。

・今回の体験&アイデアワークショップを、障害のある当事者一緒に考える時間があればいいなと思った。今まで工芸をやっていたので、現代技術と伝統技術を組み合わせることも考えていきたい。

・ようやく「IoT」という技術が日常のレベル(たとえば、時計)に入れることを考えれるようになってきた。どこまでが技術でやるべきで、どこまでが人がやるべきか。ログをとるとか大変なところは技術がやるべきで、本当に必要なことを人がやるようにできたらよい。

・MESHを見て聴いて、とても感動した。作業でも使えるし、遊びでも使えそう。いまやりたいことは施設にMESHを紹介すること。

・3Dプリンタもレーザーカッターも重い障害のものづくりに役立てることができる。スタッフの作業とか在庫管理とかもIoT・Fabでシュッとできないかなと思う。スタッフ自身も仕事とプライベートも充実させると楽しいと思うので、いろんな技術を柔軟に取り入れてできるといいのかなと思う。一般企業でものづくりをしている人とも連携しながら、Fab・IoTの協働ができると楽しそうだと思っている。

・普段の仕事では商品のPRとかをしている。成功しているところを参考にしたり、手さぐりでやっていることが多いので、データをシェアしあって、みんなで福祉の現場の良い所を学んでいけるようになればいい。連携できることはすることで、現場の利用者さんの意思(やりたい)という想いが深められるようにしたい。

・福祉の現場で困っていることや助けてほしいこと以外にも、すごく面白いことがいっぱい起こっている。けれども、「困っている」「助けて」のイメージが多い。面白い部分が技術で伝えられたり、制限から逆転の発想で面白おかしく伝えられたりできるといい。

・(技術者として)やりたいことあることは分かっているので、あとはやりかたの敷居を下げる。 

・いまはパソコンを教えている。自分がスキルアップして、IAMASにある機材など今の技術を説明できるようになれって、頼ってもらえるようになりたい。

・今回のワークショップのアイデアは、「職員側の目線で見守る」というより「本人が能動的に使えるもの」という視点が多く可能性を感じた。障害のある当事者で、グループホームで生活できないし、家族の高齢化で家で住むことも難しい人もいるなかで、技術によって何かできるのではないかという期待はある。

 

小林茂さん、山田さん、秋山さんが、職場の同期だったら、お願いしてみたいこと、一緒にやってみたいことは?

 

・小林茂さんには、利用者さんが、はたらかなくても収入を得られる方法。秋山さんには、利用者さんが発表するときに、利用者さんの面白さをインターネットを使って世界中に発信してくれる。山田さんにはAI搭載の音声変換器をつくってほしい。

・車が自動運転の時代なのに、電動車いすは昔からそんなに変わっていない。みんなが自由に安全に動くことができたら、みんなの経験値が増えるので、そういう装置があるといいな。

・3Dプリンターを聴いたときに、 胃ろう(身体機能の低下などにより口から食事をすることが困難になった人が、胃から直接栄養を摂取するための医療装置をつけている人)を思い浮かべた。身体のためにもいろいろな姿勢をできるようにしてほしいが、うつ伏せになるときにPT(Physical Therapy:理学療法士)がいろいろな道具を駆使して、組み合わせて、掘ったり穴あけたりしていて姿勢を変えたりしている。身体をスキャンして、姿勢の変えやすい道具をつくれたらいいなと思う。

・ミュージックベル(ハンドベル)やっていて、楽譜の読めない人たちが演奏しやすいシステムがほしい。楽譜が読めないので数字で表したり、演奏中は数字のところを棒で指す職員がいたり、発表するときは必ずホワイトボードがあって観客に顔が見えなかったり、いろいろと課題があるので、自分たちで演奏できるシステムがほしい。

 

自分一人でできることが少なかった時代から、レーザーカッターや3DプリンターやMESHなどを通じて、個人ができることが増えています。

さらには、「個人でできる」=「自分で何とかしなければいけない」というわけではなく、分からないことがあったり、道具がそもそもなかったり、頼りたいときに誰かとつながる機会まで増えてきています。

これからも岐阜県内で勉強会を開催していくので、引き続きFab・IoT × 障害福祉の可能性について協働を深めていきたいと思います。

どうしても技術が先行して「FabとIoTは障害福祉をどう変えるのか」を考えてしまいがちですが、「障害福祉はFabとIoTをどう変えるのか」といった視点も大切だなと感じたワークショップでした。

 


小林 大祐(一般財団法人たんぽぽの家)

障害と未来のしごと ― IoTとFabプロジェクト ―

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