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IoTの勉強会 2017/8/3

日時: 2017年8月3日(木)10:30~12:30

会場: Good Job!センター香芝(奈良県香芝市下田西2-8-1)

 

1)IoT ミニ勉強会  塩瀬隆之さん / 京都大学総合博物館 准教授

開口一番、塩瀬さんは問いかける。


「IoTって言葉は最近よく聞くけど、そこから何をイメージしますか?」

「IoT = Internet of Things (モノのインターネット)と言われてもピンとこないのではありませんか?」


まったくそのとおりだと思う。これだ、というイメージがわかなかった。

塩瀬さんは、IoTの関連用語として、IoE (Internet of Everything)があることを教えてくれた。インターネット人口が頭打ちになるのを見越して、人間だけでなく極端にいえば、犬や猫、すべてのものをインターネットにつなげる構想のことだ。塩瀬さんいわく、IoTとは、ドア、コップ、靴、その他すべてにIPアドレスを割り振り、センサからとったデータをインターネットに接続させて、一挙手一投足、行動のすべてを情報化してしまおうというもの、だという。

塩瀬さんは、すでにこの世に出ている、IoTを使った商品やプロジェクトをいくつか紹介してくれた。

 ▶Sony の開発したIoTガジェット MESH(メッシュ): http://meshprj.com/jp/

 ▶IoTリハビリアプリ モフトレ: http://jp.moff.mobi/

 ▶外からスマホでエアコン・家電を動かせるwebサービス Pluto: http://pluto.io/

 ▶子どものための新しい就労支援プロジェクト ミニフューチャーシティ: http://www.mfc.gocco.co.jp/

ミニフューチャーシティとは、塩瀬さんが岐阜県のクリエイティブカンパニーGOCCOさんとともに立ち上げたもので、大人が考えるより、子どもたちのほうがずっと電子マネーを自由自在に使いこなしているそうだ。

ミニ勉強会では、Sony製品のMESHを実際にもってきて実演してくれた。加速度センサを動かしたら、ブザーがなるシステムが簡単に作れることがわかった。塩瀬さんいわく、例えば、ドアが動いたら音を出す単純なシステムを作るにしても、警告音を出すか(不審者対策)、「いらっしゃいませ」と音声データを流すか(顧客対策)は、プログラミング次第で如何様にでも変更可能だという。

しかし、と塩瀬さんはつなげる。IoTそれ自体はニュートラルなシステムであって、そこから自動的に自分たちが欲しいデータが出てくる魔法の壺であるわけではないという。IoTを単に導入しただけでは、膨大なデータが手元に残るだけであり、情報を持て余すだけだということ。

つまりこういうことではないか? 自分たちが、いったい何を知りたいのか、明確化したうえで導入するか、そうでなければ、何かありそうだと思う場所にあるモノにかたっぱしからセンサをつけ、データマイニングする馬力をもったスタッフにローデータ間の関係を見出してもらうかしないといけない。

それぞれのセンサからのローデータ間の関係性を読み取り、自分たちの欲しいデータにカスタマイズすることが大事なわけだが、福祉施設にそこまでのマンパワーがあるかどうかは疑問であり、導入を渋る施設がたくさんあるのもよくわかる。

必要なのは、先陣を切って導入した施設が、成功事例と失敗事例を開示しながら、誠実に経過報告をしていくしかないのだなと思った。結局は、モノを得ることではなく、日ごろからスタッフ間のコミュニケーションを密にし、どんなことを自分たちは知りたいのかを知り得ることが重要であるのだ。

塩瀬さんがこの日教えてくれたのは、現代の企業の多くも、ほとんど同じ問題を考えているということだ。提供するのはモノではなくサービスの時代に入った。例えば、昔は自宅にテレビがあるのがステイタスであり、いい車に乗るのがステイタスであった。しかし今は、テレビという機械が欲しいのではなく、面白いコンテンツが見たい。車が欲しいのではなく、楽に移動がしたい。モノではなくどんなサービスを提供すればいいのかを、現代の企業は考えているという。

勉強会では以下のシステムを紹介してくれた。

 ▶PSS: Product Service Systems

 ▶Service Dominant Logic

 ▶Industry 4.0

勉強会前半はIoTとは何かという一般的な話だったが、後半に入ると、福祉施設に実際にIoTを導入しようとするとき、どんなことに気を付けたらいいかという実践向けのレクチャーがなされた。

塩瀬さんは、disable person(できない人) からdisabled person(できなくさせられている人)という障害のとらえ方の変化に感銘を受けた人のおひとりであり、福祉施設がIoTを導入することによって、障害のある人の、できなくさせられている状態が変化し、できる行動の選択肢が増えることを見込んでいらっしゃった。

しかしそのためにも、少なくとも以下の2種類の抵抗を上手にマネジメントしていく必要があることをおしえてくれた。

一つは、プライバシーの問題である。塩瀬さんは講演中、「監視」のためにデータを使いたいのか、「見守り」のためにデータを使いたいのか、何度も私たちに問いかけていた。この境目は本当に難しいと思った。

もう一つは、そもそも新しい技術を導入することに対する心理的抵抗を考えないといけないという話であった。システムを買うだけ買っても、結局は誰も使いこなせることができずに、面倒な仕事が増えるだけではないかという疑念は必ずと言っていいほど現場から出てくる。これを、テクノロジー・アクセプタンスの問題と呼ぶそうだ。典型的な反応としては、「私、機械音痴で、こういうの全然わかりません」とアレルギー反応的に取り付く島もなく拒否されてしまうもの。

最後に塩瀬さんは岡山県総社市の障がい者1000人雇用センターの事例を紹介しながら、インクルーシブワークプレイスデザイン(まるでステンドグラスのように、多様な形状をありのままに活かすタレントマネジメント)の必要性を訴えていた。従来の製品生産システムが、画一化された真四角のタイルを生産し、それを敷き詰めるような方法だとすれば、その発想をこそ乗り越える必要があるという。

 

2)ミニワークショップ 小林大祐さん / 一般財団法人たんぽぽの家 

 

1)の勉強会に引き続いて、小林さんをファシリテータとしてミニワークショップが開催された。SonyのIoTガジェットのMESHを題材に、参加者を2チームにわけて話し合いがなされた。「どうやって、つながるのか?」という技術的な問題(Lan, wi-fi, Bluetooth)はこの際脇にやって、「つながって、何がしたいのか?」を考えるように促された。


・眠ったらテレビと電気を消すシステム

・いろいろなところに書き留めたメモの内容を一体化してくれるシステム

・認知症の方がしまい込んだお金のありかをすぐ見つけられるシステム

等々、さまざまな意見が出た。

 

 

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勉強会の後、午後から「インクルーシブワークプレイス」会議が開かれた。

最初に提示された議題は3つだった。

○議題1:IoTとFabをGJセンターでさらにどう進めるか。

○議題2:QOW(Quality of working life)を考えてみよう。ワークライフバランスの問題にすると、どうしてもライフの充実を目指す方向の話になってしまう。しかしワークは必要悪でもなく、ワークとライフは決して対立しないのではないか。

○議題3:テクノロジー・アクセプタンス。技術導入に対するどこに抵抗があるのか。

会議がはじまると、リラックスした雰囲気のなか、多様なコメントが出る。この調子でブレインストーミングをしていきましょう、ということになった。(別にIoTじゃなくてもよくて、絵だけとかショップだけというふうにならず、メンバーの選択肢が増えるのがいい、というコメントが個人的には印象的だった。)


最後に、塩瀬さんより、「はたらく」の反対語を3つ、類義語を3つ、それぞれ挙げるようお題が出された。「はたらく」の反対語に、「遊ぶ」、「休む」を挙げた人がいっぱいいる一方で、今をときめくGoogle の社員に聞くと、「はたらく」の反対語ではなく類義語のなかに、「遊ぶ」、「研究する」が入るという。「はたらく」イメージそのものが、つらいものから楽しいものまで多様であることがこのお題からもうかがえた。

(後安美紀)

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